金融機関が企業に対して融資を行う場合、元金の返済はできるのだろうか、と審査するのは当然のことです。その判断基準について検討したいと思います。
【元金の返済】
企業の元金返済の原資は、税引後利益と減価償却費です。減価償却費は費用として計上されるものの、実際には出金されておらず手元に残っているお金と考えられます。また、税引後利益は事業活動で生み出されたお金です。
さて、金融機関の判断では、企業の税引後利益(A)プラス減価償却費(B)が設備手形・月賦(C)プラス返済元金(D)と比べて多いか少ないかは重要な点です。
(A+B)の金額が多く、(C+D)の金額が小さいほど、返済能力のある企業と判断します。
企業の税引後利益(A)
減価償却費(B)
設備手形・月賦(C)
返済元金(D)
【赤字が続くと借入は雪だるま式に増える】
通常、企業は収益がある場合、税引後利益の他に減価償却費も計上します。
元金の返済は「収益」で弁済するというのが原則ですから、このことからも金融機関との付き合いは、企業が利益体質(黒字体質)の状態であることが大切になります。
残念ながら、赤字である企業の場合はどうでしようか。
(C+D)の金額が(A+B)の金額を上回ります。この状態のとき、企業は金融機関の借入で資金繰りをつけることになります。
3年間、赤字が続く状態を考えてみましよう。1年目、当初の借入が3,000万円ありました。この借入は5年で返済する約束でしたが、赤字のため、赤字分500万円と返済分600万円の計1,100万円の新たな借入で賄うことにしました。
2年目、1年目と同様500万円の赤字とします。資金繰りをつけるため、新たに1,320万円の借入が必要でした。
3年目の説明は省略しますが、3年間で新たに4,004万円を借入した上に、このまま4年目を迎えると借入金額は5,584万円、返済元金は1,401万円になります。
金融機関は、二期連続赤字の企業に対しては回収の一途で臨むという姿勢を、ご理解いただけるのではないでしょうか。