先の営業活動に伴うお金の出入りを次のように表してみます。
(A)〔売上高−仕入高〕−(B)〔売上債権の増加額−仕入債務の増加額〕
ここで(A)の部分は、通常売上高に対する仕入原価あるいは製造原価の比率はあまり大きく変動しません。したがって、ある期に売上が伸びるとすれば、その増加額に比例してその差額は増加する。つまり(A)の額だけ資金が流入します。
しかし、そのお金は自由に使えるかといえばそうではありません。その差額は、人件費やその他の経費の支払のためのものだからです。使えるお金はそれらの経費を差し引いたあとの利益の額だけですから、普通の企業では微々たるものかもしれません。
その一方で、売上が増えれば、(B)の部分はかなりの額が増加します。というものの普通には、手形の期間だけでも何ヶ月にもなるのですから、売上高の増加分の数か月分となり、それだけの期間、お金は入らないということです。
もちろん、仕入の方も事情は同じです。つまり、その分、仕入先へしわ寄せできると支払うお金は少なくて済みます。しかし、売上高は必ず仕入高よりも大きいから仕入先にしわ寄せできるのはその一部だけです。結局のところ、(B)の算式の差額分だけ、売上が増えたために、お金は足りなくなるのです。
(A)の金額のうち使えるお金はわずかに利益の額だけ、それに対して(B)は、売上高と仕入高の差額の数ヶ月分となります。(A)は経費の支払に当てるから、残りはわずかです。そのため売上が増えるとの額だけお金が不足することになります。この(B)として算出される額が運転資金です。
さらに、在庫の増加額は売上が増えれば増加分を補うべく在庫を持つことになり資金を流出させます。