〜 ワンポイント 〜 国際的租税回避スキーム
スキームとは、一般的には枠組みや仕組み、手法という意味ですが、税率の低い国に日本で課税
すべき所得を移転するなど、海外取引を利用した課税逃れ商品等を 「 国際的租税回避スキーム 」 と
呼んでいます。経済の国際化に伴い増加するスキームに対して、国税当局では、調査
・ 情報収集を
強化しています。
贈与があった場合の個人と法人の課税上の取扱い
贈与は、個人間だけでなく、個人と法人または法人間で行われることもあります。これを分類すると、
@個人から個人、A個人から法人、B法人から個人、C法人から法人、の4つの贈与に分けることが
できます。
これらは、それぞれ課税の取扱いが異なり、一般に理解しにくいところでもありますので、以下整理
してみます。
個人から個人
財産をあげる者には税金がかからず、財産をもらった者に原則として贈与税がかかります。
ただし、現在1暦年ごとに110万円までは基礎控除として贈与税が課税されない他、婚姻
関係が20年以上である配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための
金銭の贈与を受けた場合には2,000万円の控除、一定の期間の間に20歳以上の者が
その直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合には、一定額の控除があります。
具体的な贈与税額は、図表1に、負担率は図表2が見やすいので参照してください。
図表1 贈与税の速算表
基礎控除額及び
配偶者控除後の課税価格 , |
税率 , |
控除額 , |
200万円以下 |
10% |
0万円 |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円超 |
50% |
225万円 |
図表2 贈与価額ごとの贈与税額税額早見表
贈与価額 ( 万円 ) , |
税額 ( 万円 ) , |
税負担率 ( % ) , |
110 |
0 |
0 |
120 |
1 |
0.8 |
130 |
2 |
1.5 |
140 |
3 |
2.1 |
150 |
4 |
2.7 |
200 |
9 |
4.5 |
300 |
19 |
6.3 |
400 |
33.5 |
8.4 |
500 |
53 |
10.6 |
600 |
82 |
13.7 |
700 |
112 |
16 |
800 |
151 |
18.9 |
900 |
191 |
21.2 |
1,000 |
231 |
23.1 |
2,000 |
720 |
36 |
3,000 |
1,220 |
40.7 |
4,000 |
1,720 |
43 |
5,000 |
2,220 |
44.4 |
個人から法人
@ 法人への贈与
法人は、財産を時価でもらったことになりl、その受贈益に対して法人税が課税されます。
具体的には、現在期末資本金1億円以上の法人の場合、年800万円相当額までは
法人税が18%、超過分は30%かかります ( 事業税、住民税省略
) 。
土地を例に仕訳をすると次のようになります。
( 土地 ) × × × / (
受贈益 ) × × ×
一方、個人も、財産を時価で贈与したとして 「 みなし譲渡所得課税
」 が適用されます。
具体的には、財産を時価で売却し収入があったとみなし、その財産の取得費などを差し
引いた所得に対して所得税がかかります。
そのため、購入時よりも値上がりしている土地のように含み益がある財産を法人に贈与
すると、個人にも税金がかかることになります。現金で贈与する場合は、含み益がない
ので、みなし譲渡所得課税は適用されません。
具体的には、不動産を個人が譲渡した場合、他の所得とは区分した申告分離課税と
なり、次の税率が適用されます。
この表で 「 長期譲渡所得 」 というのは、土地や建物を売った年の1月1日現在で、
所有期間が5年を超える場合を指し、該当しない場合は
「 短期譲渡所得 」 となります。
図表3 税率
区 分 , |
所 得 税 , |
住 民 税 , |
長期譲渡所得 |
15% |
5% |
短期譲渡所得 |
30% |
9% |
A 同族会社への贈与
同族会社に贈与した場合、株式等の価額が増加したときは、増加した部分に相当する
金額の贈与を株主は受けたことになります。
このため、財産をあげた個人ともらった同族会社双方に税金がかかるだけでなく、同族
会社の株主にも贈与税がかかります。
法人から個人
法人には、財産を時価で譲渡したとして法人税がかかります。
仕訳で示すと以下のとおりです。
( 寄付金 ) × × × / (
土地 ) × × ×
/ (
売却益 ) × × ×
貸方 ( 右側 ) は、時価と取得価額との差額が売却益となります。借方
( 左側 ) は、法人
と個人間に、従業員や役員等の雇用関係があれば賞与 ・ 役員賞与に、雇用関係がなけれ
ば寄付金になります。
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。会社など法人から財産をもらった
ときは個人には贈与税はかかりませんが、所得税がかかることになっています。この場合、
法人と個人間に雇用関係があれば給与所得に、雇用関係がなければ一時所得になります。
一時所得は次のように算定されます。
一時所得の金額 = { ( 総収入金額 ) − (
その収入を得るために支出した金額 )
− 特別控除額50万円
} × 1/2
法人から法人
財産をあげた法人は、3と同様に財産を時価で譲渡したとして法人税がかかります。
一方、財産をもらった法人は、財産を時価でもらったことになり、受贈益に法人税がかかり
ます。
図表4 贈与形式による課税関係
贈 与 形 式 , |
課 税 関 係 , |
贈 与 者 |
受 贈 者 |
@ 個人から個人 |
課税なし |
贈与税がかかる
( 基礎控除 ・ 特例有り ) |
A 個人から法人 |
みなし譲渡所得課税
( 時価で譲渡とみなす ) |
法人税がかかる
( 資産 / 受贈益 ) |
B 法人から個人 |
法人税がかかる |
所得税がかかる
( 給与又は一時所得 ) |
C 法人から法人 |
同上 |
法人税がかかる
( 資産 / 受贈益 ) |
新族に居宅譲渡、特別控除の可否
海外へ転勤することになり、家屋と敷地を弟に売却しました。この場合、譲渡益に対する3千万円
の特別控除は受けられますか?
居住用財産を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3千万円まで控除が
できる特例があります。
自分が居住していた家屋を売却するとき、譲渡相手が肉親などの場合、当事者の話し合いに
よって売却価格を著しく低くする恐れがあり、結果的に贈与税や相続税の負担軽減につながる
可能性があります。こうした行為を防ぐため、譲渡相手が次のような場合には、特別控除は適用
されません。
@ 譲渡した人の配偶者や直系血族 ( 祖父母、父母、子、孫など
)
A 譲渡した人と生計を一にする@以外の親族 ( 兄弟、姉妹など
)
B 譲渡した人の親族で、居住用家屋の譲り受け後、譲り受けた家屋で譲渡した人と同居
する人 ( @およびAに掲げる人を除く )
C 婚姻の届け出はしていないが、譲渡した人と事実上婚姻関係のある人や、その人の
親族でその人と生計を一にしている人
D 譲渡した人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している人や、その人の
親族で生計を一にしている人
E 譲渡した人、譲渡した人の@およびAの親族、譲渡した人の使用人もしくはその使用人
の親族で、その使用人と生計を一にしている人、またC、Dに該当する人を判定の基礎
となる株主等とした場合に、同族会社となる会社その他の法人
ご質問の場合、上記Aに該当すれば特別控除は受けられません。しかし、弟さんと生計を一に
していなければ、特別控除を受けることができます。
個人間の負担付贈与の課税関係
土地や建物の贈与をする際に、ローン残金も併せて贈与する場合があります。こうした贈与契約
のことを負担付贈与といいます。個人から負担付贈与を受けた人は贈与財産の価額から負担額を
控除した価額に贈与税が課税されることになります。
例えば、居住用マンション ( 時価2,000万円 ) を子供に贈与する際に、ローンの残金500万円
を引き受けてもらうような場合、贈与額が時価2,000万円、ローン残金が500万円ですから、差引
1,500万円が子供の贈与税の課税価格となります。
なお、親は子供に不動産を移転したことにより、500万円の借入金が消滅するという経済的利益
を得ることになりますので、居住用マンションをローン残高 ( 500万円
) で子供に譲渡したことにな
り、譲渡所得が発生します。
抽選券付販売による賞金品の費用の必要経費算入時期
商品等の抽選券付販売により、顧客に賞金品の抽選券や旅行、観劇などの抽選券を交付した
場合の費用については、抽選券を交付した段階で誰かに賞金品の交付等をすべき債務が成立し、
その段階で必要経費に算入できるのではないか、という疑問が生じます。
しかし、所得税の取り扱いでは、賞金品にかかる費用は、当選者から抽選券の引き換えの請求
があった日または旅行などを実施した日の属する年分の事業所得の金額の必要経費に算入する
ことになっています。
ただし、当選者からの請求を待たないで、賞金品を送付する場合には、抽選の日の属する年分
の必要経費に算入することができます。
|