〜ワンポイント〜 174万社が赤字法人
国税庁が公表しているわが国法人企業の実態調査結果によると、平成19年度
( 19年4月 〜 20年3月 ) の法人数259
万社のうち、67.1%にあたる174万社が赤字法人でした。赤字法人割合は、ここ10年近く7割弱で推移していますが、昨年
秋以降の急激な経済不況により、20年度は7割超となることも予想されます。
資本的支出と修繕費
実務的判定ポイント
税法上の法定耐用年数は、固定資産について通常の維持、管理、補修をしながらその資産本来の用途に使用された場合
に、通常その効用が持続する期間として定められています。
したがって、一般に予定された程度の維持、管理、補修のための費用は修繕費となりますが、これを超える改良等を加えた
場合には、資産に追加支出をしたものとして、資本的支出 ( 資産計上
) とされます。
しかし、資本的支出になるか、修繕費になるかの判定は微妙な点も多く、税務トラブルが生じやすいところです。そこで、
以下ポイントを整理してみます。
資本的支出とは何か
固定資産の修理 ・ 改良等のために支出した金額のうち@その固定資産の価値を高め、又はAその耐久性を増す
と認められる部分に対応する金額が資本的支出となるので、たとえば表1に掲げるような金額は、原則として資本的
支出となります。
表1 資本的支出の例 ( 法基通7−8−1 )
( 1 ) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
( 2 ) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
( 3 ) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額の
うち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
( 注 ) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる
修繕費とは何か
これに対し修繕費は、「固定資産の修理・改良等ために支出した金額のうちその固定資産の通常の維持・管理の
ため、又は災害等によりき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額」と
定義されています。
修繕費の例としては、表2のようになります。
表2 修繕費の例 ( 法基通7−8−2、旧法基通235 )
( 1 ) 建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額
( 2 ) 機械装置の移設に要した費用の額
( 3 ) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額
( 4 ) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ
又は移設に要した費用の額
( 5 ) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額
及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額
( 6 ) 家屋の床のき損部分の取替え
( 7 ) 家屋の床のき損部分の取替え
( 8 ) 家屋の畳の表替え
( 9 ) き損した瓦の取替え
(10) き損したガラスの取替え又は障子、フスマの張替え
(11) ベルトの取替え
(12) 自動車のタイヤの取替え
( 注 ) 上記の費用であっても、新たに他から取得した固定資産に支出する場合には、
資本的支出になるので要注意
20万円未満等は全て修繕費
税務では納税者の便宜と重要性の観点から、少額又は周期の短い費用については、特例を設けています。
これは、一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理 ・ 改良等が次の@又はAのいずれかに当てはまる
場合には、その費用については資本的支出と修繕費の判断を行わずに、全額を修繕費として一時の損金とすること
ができる特例です。
@ 一の修理 ・ 改良等のために要した費用の額
( 一の修理 ・ 改良等が二事業年度以上にわたって行われ
るときには、各事業年度ごとに要した費用 )
が20万円未満の場合
A その修理 ・ 改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情から
みて明らかな場合
この取扱いは他に優先するため、たとえば資本的支出の例示に該当するものであっても@又はAのいず
れかの条件に当てはまれば修繕費として処理することができます。
形式基準による判定
からの判定で区分ができなかったものについて、次の@又はAのいずれかに当てはまる場合には、その
全額を修繕費として処理することができます。
@ その金額が60万円未満の場合
A その金額が修理 ・ 改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%以下である場合
その他の判定基準
今までの判定基準をまとめると下図のようなフローチャートになります。この流れに従って判定していくと便利です。
なお、費用区分が明らかでない場合の特例として次のものがあります。
@ 資本的支出と修繕費の区分の特例
継続適用を条件に、資本的支出か修繕費かが明らかでない金額を一定の割合で振り分ける方法
A 災害の場合の区分の特例
災害でき損した固定資産の修理費等で資本的支出か修繕費かが明らかでないものについて、30%を
修繕費、残額を資本的支出とする方法
退職金を分割払いした場合の源泉徴収
会社が従業員に対し退職金を支払う場合、資金繰り等の都合により分割で支払うこととなってしまった時の源泉徴収は、確定
している支給総額に対する税額を各回の支払額にあん分してその支払のつど源泉徴収をすることとなります。
例えば、平成20年8月31日に退職した従業員 ( 在職年数20年。退職所得控除額は800万円 ) に対し、退職金総額1,600
万円を下記の金額で3回に分けて支払った場合は次のように計算されます。
第1回支払 20年 8月31日 800万円
第2回支払 20年10月31日 400万円
第3回支払 21年 1月31日 400万円
( 1 ) 総額に対する源泉徴収税額
@ 退職所得の金額
( 16,000,000円 ー 8,000,000円 )
× 1/2 = 4,000,000円
A 4,000,000円に対する税額
4,000,000円 × 20% ー 427,500円 =
372,500円
( 2 ) 各支払時に徴収する源泉徴収税額
@ 第1回支払時
372,500円 × 8,000,000円 ÷ 16,000,000円
= 186,250円
A 第2回支払時
372,500円 × 4,000,000円 ÷ 16,000,000円
= 93,125円
B 第3回支払時
372,500円 × 4,000,000円 ÷ 16,000,000円
= 93,125円
ちなみに退職金をもらった従業員が退職所得の収入金額とすべき時期は原則として支給の基因となった退職の日となります
ので、上記の場合は平成20年分の退職所得となります。
また、このような分割払いの源泉徴収税額の計算は支給額が確定している給与について分割払いした場合も同様です。
認定NPO法人に対する寄附金
平成20年4月1日以降に認定NPO法人 ( 国税庁長官の認定を受けた特定非営利活動法人
) が行う、特定非営利活動に
係る事業に対して法人が寄附をした場合の損金算入限度額の所得基準が100分の2.5から100分の5になりました。
認定NPO法人に対する寄附金の損金算入限度額は、一般の寄附金とは別枠で計算することができ、1年決算の普通法人の
場合、次の@とAの合計額の2分の1の金額となります。
@ その事業年度終了の時の資本金等の額の1,000分の2.5相当額
A その事業年度の所得金額の100分の5相当額
上記に基づき計算すると1年決算普通法人で期末資本金等の額が1,000万円、所得金額が500万円の場合、限度額は
137,500円となります。この場合改正による増加額は62,500円となります。
配当金を源泉徴収しなかったときの取扱い
非上場会社が100万円の配当を支払う場合、20万円 ( 20% ) の源泉徴収が必要ですが、この20万円を徴収しないで
100万円を支払ったときは、どのように取り扱われるのでしょうか。
125万円の配当金の支払いに対し25万円の源泉徴収があったものとして取り扱われます。
よって追加で納付する所得税25万円について租税公課として経理しても、配当金の追加支払いと扱われ損金になりません。
ただし、その25万円について仮払金として経理し、相手に求償する場合には、仮払金として経理しても差し支えありません。
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